人生の《処方箋的》映画考

この「ままならない人生」を歩むとき、一つの映画がそっと、背中を押してくれる時もあれば、優しく寄り添ってくれるときもあります。 心を癒し、また、鼓舞してくれる映画を中心に、感想を綴っています。

「人生は時々晴れ」

~想いを言葉にすることの大切さ~

 

作品情報

   原題    All or Nothing
   監督    マイク・リー
   脚本    マイク・リー
   出演者      ティモシー・スポール
         レスリー・マンヴィル
         アリソン・ガーランド
         ジェームズ・コーデン
   公開     2003年6月21日
   上映時間   128分
   製作国    イギリス

あらすじ

 

タクシー運転手のフィルは、スーパーで働く妻ペニー、老人ホームに勤める娘レイチェル、そして無職の息子ローリーの一家4人で、ロンドンの集合住宅に住み、質素な生活を送っている。娘は決して心を開こうとはせず、息子は反抗的な態度を崩さない。結婚生活の長い妻とも深い溝を感じてしまう今日この頃。すっかり、家族らしい会話もなくなっていた。それはフィルの家族だけではない。同じ集合住宅に住むフィルの同僚やペニーの同僚もやはり家庭内に問題を抱えていた。そんなある日、予想もしない悲劇がフィルの一家を襲う…。

 

 感想 

 
その食卓に会話は無い。
 
家族で同じ食卓についても、それぞれが、それぞれの世界で食事をする。
 
安らぎも、楽しさもない食卓。
 
鬱々と、重い雰囲気の中、心の声は発せられることなく、
食べ物とともに飲み込まれる。

どうして、こうなってしまったのか。
いつから、こうなってしまったのか。
 
一番近くにいる筈の家族が、一番遠い。。。

ひとりの食卓よりも、何倍も寂しい家族の食卓。

ちょっとしたボタンの掛け違い、
小さいけれども大切な何かを、おざなりにしてきた「つけ」だろうか。
 
歯車は、いつの間にか全く噛みあわなくなっている。

安らぎの場である筈の家庭は、まるで針のムシロのように、
それぞれの心をチクチクと突き刺す。
 

「秘密と嘘」のマイク・リー監督のこの作品は、「秘密と嘘」同様、
脚本はなく、半年間のリハーサルとディスカッションを重ね、
俳優さん達に即興でセリフを言わせ、演じさせている。

何の為に働くのか。
家族とは何だろう。
 
人生の迷路に迷い込んでしまった家族を、
脚本なしにも関わらず、本当に上手く作り上げていて驚く。

温かく、幸せであるべき家族の一人ひとりが、
孤独に身をさいなまれて生きていることの、寂しさ、むなしさ。
 
そこから、抜け出すためにはどうすればいいのか?
 
この映画は、最後にその答えを教えてくれる。