人生の《処方箋的》映画考

この「ままならない人生」を歩むとき、一つの映画がそっと、背中を押してくれる時もあれば、優しく寄り添ってくれるときもあります。 心を癒し、また、鼓舞してくれる映画を中心に、感想を綴っています。

「アイリッシュマン」

 

 

  作品情報 

 

   原題     The Irishman

   原作     チャールズ・ブラント  「I Heard You Paint Houses」

                                 「アイリッシュマン」<上> (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

                 「アイリッシュマン」<下> (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
   監督     マーティン・スコセッシ
   脚本     スティーヴン・ザイリアン
   出演者       ロバート・デニーロ
          ジョー・ペシ
          アル・パチーノ
          ハーベイ・カイテル
   公開     2019年11月15日
   上映時間      210分
   製作国    アメリ

 

  あらすじ  

 

タクシードライバー」「レイジング・ブル」など数々の名作を生み出してきた巨匠マーティン・スコセッシロバート・デ・ニーロが、「カジノ」以来22年ぶり9度目のタッグを組み、第2次世界大戦後のアメリカ裏社会を生きた無法者たちの人生を、ひとりの殺し屋の目を通して描いた力作。伝説的マフィアのラッセル・バッファリーノに仕えた実在の殺し屋で、1975年に失踪した全米トラック運転組合委員長ジミー・ホッファをはじめ、多くの殺人事件に関与したとされるフランク・“アイリッシュマン”・シーランをデ・ニーロが演じるほか、ジミー・ホッファ役のアル・パチーノラッセル・バッファリーノ役のジョー・ペシと、ハリウッドのレジェンド級俳優が豪華共演する。脚本は「シンドラーのリスト」「ギャング・オブ・ニューヨーク」のスティーブン・ザイリアン。Netflixで2019年11月27日から配信。日本では第32回東京国際映画祭のクロージング作品としても上映。配信に先立つ11月15日から一部劇場にて公開。                            映画.comより

 

   感想   

 

軽快なリズムの50’sや60’sのロカビリーに乗せて、

銃を撃ちまくるり、マフィアの世界を描く、

これぞ、スコセッシの真骨頂。

 

3時間を超える長さの、見ごたえ十分な重厚な作品。

 

そして、兎に角、俳優陣が豪華。

 

主人公はロバート・デニーロだが、

ジョー・ペシにしても、アル・パチーノにしても、

どのシーンも見逃せないほど豪華!

 

瞬きするのが惜しいくらい(笑)

 

チョイ役だったが、ハーベイ・カイテルも出ている!

 

特にジョー・ペシに関しては、

半ば引退していたのも同然だった彼を、

スコセッシが口説き落とし、

出演にこぎ着けたらしい。

 

 

そして、驚きなのは、この作品が

ノンフィクションを原作にしている、と言うことだ。

 

実在の人物、殺し屋「アイリッシュマン」の告白に

基づいているのだ。

 

労働組合とマフィアとの癒着。

 

ケネディ大統領の暗殺。

 

キューバ危機。

 

歴史の裏に、これだけのマフィアの関与があり、

お金と、陰謀、殺人が渦巻く。

 

歴史には、いろんな角度があり、

一方から見れば正しく、

また一方から見れば間違っている。

 

あてる焦点により、

いろんな見え方があるのだということを

改めて感じた。

 

 

そして、もっと驚くのは、

この作品に出演時、ロバート・デニーロジョー・ペシ

アル・パチーノもハーベイ・カイテル

皆、70歳後半だったということだ。

 

30代位からの物語を

皆、本人が演じている!

 

これには、流石に、撮影時、特殊なカメラを何台も用い、

顔のしわを無くしたり、ハリをもたせたり、

といったCG効果を使ったらしい。

 

しかし、体の動きは、CGを使えない。

 

劇中、アル・パチーノが椅子から立ち上がるシーンがある。

 

この時の設定は49歳ということで、

もっと速く立ち上がって、部屋を出て行ってくれ、と

スコセッシに注文されたらしい。

 

皆、お腹がかなり出ていて、

体形はどうすることもできないが、

背筋をのばしたり、素早く動くようにしたりと

工夫したらしく、

ほぼ、違和感を感じなっかた。(ひいき目かしら)

 

本当に、すごい!!

 

 

マフィアものらしく、

全ての言葉に「ファッ〇ン」がつき、

皆、目力が強い!

 

深いのか、深くないのかわからないが、

なんだか心に響く言葉をささやく。

 

「少し心配だという奴は、ひどく心配している。」

 

「常に動いている奴には、全体像が見えてない。」

 

「俺へと続く道は一本でいい。」

 

無表情で、核心を突く。

 

私たちの住む世界では、出てこない言葉の数々。

 

 

裏社会で暗躍し、世の中を密かに牛耳るマフィアだが、

一つのミスが命取りとなる、

常に死と隣り合わせの非常な世界だから出てくる言葉なのか。

 

 

しかし。

 

私たちの世界と裏の世界に等しく訪れるもの。

 

それは「老い」だ。

 

 

「人は、年を取らないと時間の速さに気づかない。」

 

 

時間の速さに気づいたとき、

人間は等しく、同じことを想うのではないだろうか。