人生の《処方箋的》映画考

この「ままならない人生」を歩むとき、一つの映画がそっと、背中を押してくれる時もあれば、優しく寄り添ってくれるときもあります。 心を癒し、また、鼓舞してくれる映画を中心に、感想を綴っています。

「ミリオンダラー・ベイビー」

 

 

  作品情報 

 
   原題    Million Dollar Baby
   監督    クリント・イーストウッド
   脚本    ポール・ハギス
   出演者      クリント・イーストウッド
         ヒラリー・スワンク
         モーガン・フリーマン
         ジェイ・バルチェル
   公開     2005年5月28日
   上映時間     133分
   製作国   アメリ

 

  あらすじ   

 

グラン・トリノ」「ミスティック・リバー」のクリント・イーストウッドが監督・主演のヒューマン・ドラマ。小さなボクシング・ジムを営む老トレーナー、フランキー。ある日、31歳になる女性マギーがフランキーに弟子入りを志願するが、追い返してしまう。フランキーの親友スクラップは、諦めずジムに通うマギーの素質と根性を見抜き、目をかける。フランキーはついにトレーナーを引き受けるのだが…。

                                                                 アマゾンプライムより

  感想    

 

この世に生まれたからには、理不尽で不公平なこの世界を

生き切らなければならないことは、わかっている。

 

しかし、

神さまは、なぜ、これでもかと、人間に困難をお与えになるのだろう。

 

23年間、毎日、教会に通う孤独な老人フランキーも

家族に恵まれず、誰からも愛されず、貧困にあえぐマギーも、

例外ではなかった。

 

孤独な人生を歩む二人の、「人生、さぁ、これからだ」というときに、

容赦なく降り注いだ試練に、涙が止まらない。

 

 

いわゆる「毒親」の家庭に生まれてしまったマギー。

 

それでも、

もともと素直で、ガッツがあり、優しい性格の彼女は、

自ら家族を愛そうとする。

 

その愛に対する、母と、妹弟の態度は、

本当に腹立たしい限りだが、

映画の中だけに留まらず、

実際の世の中にも、ごまんといるのだから

人間の愚かさを、呪わずにはいられない。

 

 

劇中、ボクシングについて、

モーガン・フリーマンが言う。

 

「これは尊厳のスポーツ」

「人の尊厳を奪い、それを自分のものとする。」

 

 

これほど真剣に、自らの体を鍛え、

贅沢をせず、まじめに働き、

地の底から這いあがろうともがき、

ヒリヒリするような人生を歩むマギーを見て、

自らの生き方の生ぬるさを

感じずにはいられない。

 

まさしく人間に等しく与えられた

自らの「尊厳」を守るために戦う

美しき戦士だ。

 

 

映画の後半、私はずっと泣いていた。

 

戦い続けた先に待っていたのは、

自分自身で守ることのできない

人間の「尊厳」だったから。

 

そして、それはまた、

一緒に戦い続けたフランキーにとっても

同じ苦悩だった。

 

「モ・クシュラ」

 

マギーのリングネームが

ただ一つの救いだ。

 

 

 

  雑感    

 

この作品は、2004年のアカデミー賞

作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞を獲っている。

 

ヒラリー・スワンクの演技はボクシングシーンも含め

本当に素晴らしかったが、

モーガン・フリーマンの存在感も

欠かせないものであったと思う。

 

モーガン・フリーマンは声が本当に良い!

 

ショーシャンクの空に」などでもそうだったが、

ナレーションにモーガン・フリーマンがくると、

それだけで、重厚感が増し、

この映画は絶対に良い映画だ、と

確信をもってしまう。

 

そして、クリント・イーストウッド監督作品は、

本当に外れがない!

 

大好きな監督の一人。