人生の《処方箋的》映画考

この「ままならない人生」を歩むとき、一つの映画がそっと、背中を押してくれる時もあれば、優しく寄り添ってくれるときもあります。 心を癒し、また、鼓舞してくれる映画を中心に、感想を綴っています。

「西の魔女が死んだ」

 

 

  作品情報 

 

監督   長崎俊一

原作   梨木香歩   「西の魔女が死んだ」(新潮文庫)

脚本   矢沢由美

     長崎俊一

出演   サチ・パーカー

     高橋真悠

     りょう

     木村祐一

公開   2008年6月21日

時間   115分

制作   日本

 

   あらすじ 

 

中学に進んで間もない夏の初めに、学校へ行けなくなったまいは、森で暮らす”西の魔女”のもとで過ごすことに。西の魔女とはまいのママのママ、英国人である大好きなおばあちゃんから、「早寝早起き、食事をいっぱいとって、よく遊ぶ。そして、何でも自分できめること」の大切さを教わる。まいは戸惑いながらも、料理、掃除、洗濯、庭づくり・・・・と、毎日励んでいくが、実はその生活は、”魔女修行”の始まりだった―――。

                                                                  アマゾンプライムより

 

   感想  

 

「最初は何も変わらないように思います。

そしてだんだんに疑いの心や、怠け心、あきらめ、
投げやりな気持ちが出てきます。
 
それに打ち勝って、ただ黙々と続けるのです。
 
そうして、もう永久に
何も変わらないんじゃないかと思われるころ、
 
ようやく、以前の自分とは違う自分を発見するような
出来事が起こるでしょう。
 
そしてまた、地道な努力を続ける、
退屈な日々の連続で、
 
また、ある日突然、
今までの自分とは更に違う自分を見ることになる、
 
それの繰り返しです。」
 
 

私は、この、西の魔女が住んでいそうな
良く言えば、緑豊かな、
悪く言えば、何もない、山に囲まれた田舎で育った。
 
高校生のころは、
「早くこんなところから抜け出したい」
と、思っていたのに、

今は、
「もっと歳をとったら、田舎で暮らすのもいいなぁ」と思う。
 
現金なものだが、時は人を変えるものなのだ。
 
 
そして、この「西の魔女が死んだ」の
おばあちゃんのように暮らせたら
とてもいいなぁと思う。
 
 
野イチゴを摘んで、手作りジャムを作り、
洗濯したシーツは、ラベンダーの茂みの上に直接広げて日に当てる。
 
たくさんのハーブを育て、
ハーブティーにしたり、虫除けにしたり、

鶏を飼い、毎朝、卵があるかどうか、
ワクワクしながら鶏小屋を見に行く。
 
古着を利用して、孫のエプロンを作り、
庭に咲いた花を花瓶にさす。
 
きちんと生活し、
穏やかに、ゆるやかに流れる時間。。。
 
 

きちんと生活すること、
衣食住に「手を抜かない」という事は、とても大事な事だ。
 
そして、それはとても大変なことでもある。
 

ニーチェだって言っている。
生活を重んじる
 
わたしたちは、慣れきっている事柄、
つまり衣食住に関して
あまりにおろそかにしがちだ。
ひどい場合には、
生きるために食っているとか、
情欲ゆえに子供を産むなどと
考えたり言ったりする人もいるくらいだ。
そういう人たちは、
ふだんの生活の大部分は堕落であり、
何か別の高尚なことが
他にあるかのように言う。
しかしわたしたちは、
人生の土台をしっかりと支えている
衣食住という生活に
もっと真摯な眼差しを向けるべきだ。
もっと考え、反省し、改良を重ね、
知性と芸術的感性を生活の基本に
差し向けようではないか。
衣食住こそがわたしたちを生かし、
現実にこの人生を
歩ませているのだから。
 
 
魔女になりたい、と言ったまいに、
おばあちゃんは言う。
 
「いちばん大切なのは、意思の力。自分で決める力、
 自分で決めたことをやり遂げる力です。」
 
生活がすっかり乱れていたまいに課せられた課題は

『早寝早起き。食事をしっかりとり、
よく運動し、規則正しい生活をする』こと。
 

そう、自分で日々の計画を立て、
それを守ることだ。
 
しかし、自分で自分の約束を守るという事が
どんなに難しいことか、
私には、とても良くわかる。
 
人は、大体において、
 
「努力が効果をあらわすまでには時間がかかる。
多くの人はそれまでに飽き、迷い、挫折する。 」
                ヘンリー・フォード

からだ。
 
私も何度、飽き、迷い、挫折してきたことか。。。
 

イチローも言っている。
 
「今、自分にできること、
 頑張ればできそうなこと、
 そういうことを積み重ねていかないと、
 遠くの大きな目標はちかづいてこない。」
 
 
冒頭の言葉は、小説の一節だが、
そんな私にとっては、もっと早く知りたかった
と思ってしまう珠玉の一節だ。
 
 
 
そして、
人間関係に悩み、思春期の迷路の中でもがいていたまいだが、

おばあちゃんの大きな愛につつまれ、
野イチゴを摘みながら、

裸足でじゃぶじゃぶシーツを洗いながら、
次第に、笑顔を取り戻していく。。
 
 
おばあちゃん役のサチ・パーカーの話し方が
何とも言えず、耳に心地よく、
すーっと胸に響いてきて、
まるで、本当に優しい魔女のようで素敵だった。
 
 
温かくて、幸せなラストシーンは必見。
 

この映画は、
きっと子供にも、大人にも、
必ず何かをもたらしてくれるだろう。