人生の《処方箋的》映画考

この「ままならない人生」を歩むとき、一つの映画がそっと、背中を押してくれる時もあれば、優しく寄り添ってくれるときもあります。 心を癒し、また、鼓舞してくれる映画を中心に、感想を綴っています。

池波正太郎「映画を見ると得をする」

 
 映画を観るということは
「いくつもの人生を見る」ということだ。
 
 長く映画を観つづけている人は、
   きまってお洒落のセンスがいいものだよ。
 
 一週間に一本は映画を観なくてはいけない。

 映画くらい観て得するものは他にない。。。  
 
        池波正太郎「映画を見ると得をする」~より
 
 
 
 この本で「シネマディクト」と言う言葉に初めて出会った。
 シネマディクト→「映画狂」。
 
 著名な時代小説家で、食通でも知られる彼だが、これほどの映画狂だったとは
 この本を読むまで知らなかった。
 
 忙しい身でありながら週に何度も映画館に通い、3日も映画を観ずにいると、
 生理的飢餓感を感じるほどのシネマディクトだったらしい。
 
 小説を書き、舞台の脚本を書くという仕事柄、
 それは勉強の為でもあったのかもしれなが、
 本人も言っているように、
 「自分の人生以外のもっといろいろな人生を知りたいという、
 そういう欲求を生まれつき人一倍持っている人間」だったのだろう。
 
 そう、自分の人生以外のもっといろいろな人生
 
 私もそれを観たくて、沢山の時間を映画に費やしてきた。
 
 そして、人生の理不尽さや不公平さ、人間の業や怖さや儚さを知り、
 そしてまた、人生の美しさや素晴らしさを知った。
 
 素晴らしい映画に出会い、何度感動し、何度勇気づけられ、
 何度生きていく指針をもらったことだろう。
  
 
 彼のようなシネマディクトにはきっとなれないだろうが、
 少しでも多くの良質な映画を観て、質の良い人間になりたいと思う。