人生の《処方箋的》映画考

この「ままならない人生」を歩むとき、一つの映画がそっと、背中を押してくれる時もあれば、優しく寄り添ってくれるときもあります。 心を癒し、また、鼓舞してくれる映画を中心に、感想を綴っています。

映画の中の「キッチン」あれこれ

 

「私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。

どこのでも、どんなのでも、それが台所であれば、食事をつくる場所であれば

私はつらくない。」

 

で、始まる、吉本ばななの「キッチン」

 

何度読んだか分からないくらい大好きなこの本。

 

喪失と再生を描き、優しい空気が全体を包む。

 

 

どんなに悲しくても、つらくても、人間はお腹が空き、

生命の維持のために食事を摂る。

 

その食事を作る場所、「キッチン」に

私は、どうしようもなく魅かれる。

 

 

 

映画の中にも、いろいろなキッチンが登場する。
 
                                               
「素晴らしき日」
ミッシェル・ファイファー演じるシングルマザーで
キャリアウーマンのキッチンは、

赤で統一されているのだけれど、
細かく区切られた棚には、
ところどころに小さな観葉植物が置かれ、
光がたっぷり入りそうな、かわいいキッチンだったし、
「母の眠り」
メリル・ストリープ演じる良妻賢母のキッチンは、

清潔で、良く使い込まれ、
そこに足を踏み入れただけで誰もがホッと安心できるような、
家族の歴史が刻み込まれた、
母の優しさと強さを感じるキッチンだった。

 

 

 

 

「グッドナイト・ムーン」
女性カメラマン演じるジュリア・ロバーツ
ステップマザーとなる家のキッチンは、

シンプルで、余計なものは何も出ていない、
シルバーが光り輝くキッチンだったし、
 

ブルーを基調とした、
神秘的で美しいキッチンだった。
 
家族の食事を、思いと愛情を込めて作る場所。
 
あるいは、自分自身の為だけに、おいしい紅茶を淹れる場所。
 
キッチン。
 

それぞれの情景、それぞれの思い。
 
 
私も映画の中の主人公のように、
今日も自分だけの心地よいキッチンに立つ。