人生の《処方箋的》映画考

この「ままならない人生」を歩むとき、一つの映画がそっと、背中を押してくれる時もあれば、優しく寄り添ってくれるときもあります。 心を癒し、また、鼓舞してくれる映画を中心に、感想を綴っています。

「L.A.コンフィデンシャル」

 

  作品情報 

 

原題   L.A.Confidential

監督   カーティス・ハンソン

原作   ジェームズ・エルロイ  LAコンフィデンシャル<上> (文春文庫)

                 LAコンフィデンシャル<下>(文春文庫)

脚本   カーティス・ハンソン

     ブライアン・ヘルゲランド

出演   ケヴィン・スペイシー

     ラッセル・クロウ

     ガイ・ピアース

     キム・ベイシンガー

公開   1998年7月18日

時間   138分

制作   アメリ

 

 あらすじ 

 

1953年、ロサンゼルス。元刑事を含めた6人の男女が惨殺された事件の捜査にあたっていたロス市警の刑事バドは、やがて売春組織の娼婦リンにたどり着く。一方、殉職した刑事を父に持つ野心家のエド、そしてテレビの刑事ドラマでアドバイザーをしているジャックも動き出す。刑事たちはぶつかり合いながらも、やがて手を組み、警察内部の汚職に立ち向かうことに…。作家ジェームズ・エルロイが著した「L.A.4部作」のひとつを映画化したクライム・サスペンス。映画.comより

 

  感想 

   

1950年代のLAを背景に、軽快なリズムのジャズとともに

警察という組織の裏に潜む大きな「コンフィデンシャル」が暴かれていく、

クライムサスペンスの傑作。

 

 

幼いころ、父が母を暴力によって死なせてしまうのを目撃してしまった為、

女性への暴力に対して過剰に反応してしまう、腕っぷしだけが頼りの刑事を

ラッセル・クロウが演じ、

 

警察官だった父を何者かに殺されたが犯人は捕まらずにおり、不正を嫌うが、

出世の為なら仲間を売ることも厭わないエリート刑事をガイ・ピアースが、

 

下衆なネタで稼ぐ大衆雑誌の記者と組み、小金を稼ぐ、悪徳刑事を

ケヴィン・スペイシーが演じている。

 

 

クセの強い男たちの、それぞれの正義がぶつかり合い、

濃厚な人間模様の上に、複雑な背景の犯罪が絡みあう。

 

 

特に、これがハリウッド作品初となる、オーストラリア出身のラッセル・クロウ

ガイ・ピアースの二人が魅せる!

 

全くタイプの違う二人は、ことあるごとに反発し合うが、

二人の正義が重り、「ロロ・トマシ」が現れると、

そこから、息もつかせぬ怒涛のラストへ向かっていく。

 

華やかなLAに潜む、マフィア、麻薬、娼婦、殺人。

 

1950年代の空気感たっぷりに、ストーリーも然ることながら

俳優たちの演技がひと際かがやく。

 

 

見どころは、なんといっても、当時の警察の雰囲気だろう。

 

冒頭の、ガイ・ピアース演じるエドが刑事課を望むシーンでは、

 

「起訴を確実にするために、証拠を捏造できるか?」

「自白を取るために容疑者を殴れるか?」

「更生の望みのない犯罪者を、背後から撃ち殺せるか?」

と、上司が彼に問い、私は思わずのけ反った。

 

これが、当時の正義。

 

1950年代、という背景もあるかもしれない。

 

しかし、もうこれだけで、アメリカの警察っぽくて、開いた口が塞がらない。

これが、当たり前。アメリカ社会なのだ。

 

日本の警察も少なからず、そういった類の事はあっただろう。

しかし少なくとも、銃を持てる国と、持てない国を比較してはいけない。

次元が違う。

 

いくら市民を守る組織とはいえ、正義の基準が良くわからない警察では、

ケヴィン・スペイシー演じるジャックのような悪徳警官がいてもおかしくない。

むしろ、かわいいほうかもしれない。

 

肩幅の広いスーツを着て、バッジと拳銃を無造作にポケットに突っ込み、

清濁併せ飲む刑事たちが、LAの街を闊歩する。

 

良い悪いは抜きにして、なんとも、カッコイイ。

 

 

まるでハリウッドスターのように、週刊誌の写真撮影にニコッと笑ったり、

キメ顔でキリッとシャッターに収まる刑事たち。

当時は犯罪現場とともに刑事も堂々と雑誌に載る、

そんな大らかさがあったことにも、驚く。

 

 

そして、男ばかりの画面に華を添える、キム・ベイシンガーの存在感も

忘れてはいけない。

 

透けるような白い肌、輝くブロンドの髪に、真っ赤な口紅が良く似合う。

 

 

女性目線で思うところで言えば、

 

見た目は強面だが心根の優しいラッセル・クロウ演じるバドが、

キム・ベイシンガー演じる娼婦リンにかけた言葉、

 

「君の方が美人だ」

 

に、グッとくる女性はきっと多いと思う。

 

男性関係は手練手管の筈のリンが、

その一言で心を許してしまうのも頷ける。

 

たった一言。

その一言が深く心に突き刺さる。

人生において、そういう一瞬が訪れるときがある。

 

いつも冷静沈着、メガネの奥に秩序が見え隠れするクレバーな男、

ガイ・ピアース演じるエドが、リンの魅力の前で段々理性を失っていく様も、

何とも言えず、セクシーだった。

 

 

原作のジェームズ・エルロイの「LA四部作」の3作目に当たるこの作品、

原作で登場するキーマンなどは、一切出てこず、映画オリジナルの脚本らしい。

 

映画は映画で、本当に良くできた素晴らしい作品だが、

原作も興味をそそられる。

 

ミステリー作品は殆ど読まないが、

今度、ぜひ、挑戦したいと思う。

 

 

  

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