人生の《処方箋的》映画考

この「ままならない人生」を歩むとき、一つの映画がそっと、背中を押してくれる時もあれば、優しく寄り添ってくれるときもあります。 心を癒し、また、鼓舞してくれる映画を中心に、感想を綴っています。

「幸福」~しあわせ~後ろめたい幸せは幸せか。

f:id:eigako:20200505223428j:plain 

  作品情報 

 

原題   Le Bonheur

監督   アニエス・ヴァルダ

脚本   アニエス・ヴァルダ

出演   ジャン=クロード・ドルオー

     クレール・ドルオー

     マリー=フランス・ボワイエ

公開   1966年6月4日

時間   79分

制作   フランス

 

  あらすじ 

 

フランソワとテレーズという若い夫婦には、幼い子どもたち、娘ジズー、息子ピエロがいて、4人は誰が見ても幸福にしか見えない一家だった。ある日、フランソワは内装業の仕事で別の町に出張するが、電話を掛けに寄った郵便局の窓口で働いていた若い女性エミリーと知り合い、何度か会った2人は肉体関係を持つように。フランソワはテレーズにそのことを明かさず、こっそりとエミリーの引っ越し先の部屋に通って密会を重ねるが…。森の中の淡い色彩と美しいモーツァルトの旋律に彩られながら始まる物語で、巨匠A・ヴァルダ監督が夫婦間の愛情を美しくも残酷に洞察した傑作。ルイ・デリュック賞、ベルリン映画祭審査員特別賞受賞。       シネフィルwowowより

 

  感想 

 

池上正太郎先生の本の中に、こんな言葉がある。

 

「長く映画を観つづけている人は、きまってお洒落のセンスがいいものだよ。」

 

eigako.hatenablog.com

 

思わず先生の言葉を思い出した。

 

まさに、おしゃれの極み。

なんだこの鮮やかな色彩は!美しすぎる景色は!!この美しい音楽は!!

 

冒頭の家族のピクニックシーンから、うっとり。

幸せって、まさに、こういう事じゃない!?

ここはもしかして天国?

 

美男美女の若きカップル、まるで天使のような可愛らしさの二人の子供。

森の木陰でキスをして、お昼寝して、絵画のごとき池のほとりでお花を摘んで。

 

これが幸福でなくて、何を幸福と言うんだ!

 

 

フランス映画って、なんだかんだでやっぱりオシャレ。

 

陰翳を礼賛してしまう日本人の私にとっては、別世界の美しさ(笑)。

 

まず女優さんたちが着ているワンピースの美しい事と言ったらない。

鮮やかな花柄が白い肌に良く似合っている。

ハンドメイドが流行っている今の日本でも、リバティプリントやキャスキッドソンなど

花柄は今も人気アイテムなので、手作りをする人は見ていてきっと楽しいと思う。

今着るとしても、少しデザインを変えれば、きっとぜんぜん違和感がない。

というか、逆にヴィンテージで使いたくても高そうな生地ばかりだけど。

 

 

そしてお部屋が可愛い。なんと壁は水色!でもこれがまた素敵!

水色のワンピースを着た奥さんが水色の壁を背に電気を消すシーン。

画面左側に淡い花束が花瓶にさしてある。

これは、わざとこのワンピースにしたの?

センスが良すぎる。このシーンは永遠に脳裏から離れない。

 

古くて壁なんかボロボロと壊れているのだけれど、

お花が飾られ、小物やキッチン道具も素敵。

奥さんは洋服の仕立てをしているので、家の中にボディー・トルソーが置いてあるのが

またオシャレではないですか。

着ているワンピースもカチューシャも、子供たちの服もきっと手作りなのだ。

 

 

お料理が出来て、裁縫ができて、物静かで、お洒落で、美人ときたら、

もう、文句のつけようがない!!

 

 

しかし、いつの世も愚かでアホな男がいるもので。。(泣)

 

 以下はネタバレです。

 

 

続きを読む