人生の《処方箋的》映画考

この「ままならない人生」を歩むとき、一つの映画がそっと、背中を押してくれる時もあれば、優しく寄り添ってくれるときもあります。 心を癒し、また、鼓舞してくれる映画を中心に、感想を綴っています。

「かもめ食堂」

~独りで生きる~

 

 

  作品情報 

 

   監督     萩上直子

  原作   群 ようこ 「かもめ食堂」(幻冬舎文庫)
   脚本     萩上直子
   出演者    小林聡美
           もたいまさこ
           片桐はいり
           ヤルッコ・ニエミ
   公開     2006年3月11日
   上映     102分
   製作国    日本・フィンランド

         

 

  あらすじ 

 

夏のある日、ヘルシンキの街角に「かもめ食堂」という小さな食堂がオープンしました。その店の主は日本人の女性サチエ(小林聡美)でした。道行く人がふらりと入ってきて、思い思いに自由な楽しい時間を過ごしてくれる、そんな風になればいい、そう思ったサチエは献立もシンプルで美味しいものをと考え、メインメニューはおにぎりになりまして。しかし、興味本位に覗く人はいましたが、来る日も来る日も誰も来ない日が続きます。それでもサチエは毎日、食器をピカピカに磨き、夕方になるとプールで泳ぎ、家に帰って食事を作る、そして翌朝になると市場に寄って買い物をし、毎日きちんとお店を開く、ゆったりとしてヘルシンキの街と人々に、足並みを合わせるような、そんな時間を暮していました。サチエは、毎日真面目にやっていれば、いつかお客さんはやってくる、とそう思っていたのです。   アマゾンプライムより

 

  感想 

 

「夢を見る時ひとりなように
  人生もひとりで生きるもの」
 
「人としての強さは
  単独者になれるかどうかに尽きる」
 
 
サチエはフィンランド
小さな食堂を営んでいる。
 
名前は「かもめ食堂
 
いつも閑古鳥が鳴いている食堂だが、
サチエはあまり気にしない。
 
毎日市場へ買出しに行き、プールへ行き、
寝る前の合気道の練習は欠かさない。
 
 
そして、記念すべき第1号のお客様となる
日本かぶれの青年、
トンミー・ヒルトネンがきっかけで、
日本人観光客のみどりと出会い、
少しずつ店は繁盛していく。
 
 
小さな食堂を舞台に、
様々な人々が緩やかな人間模様を繰り広げる、
「ショコラ」や「スモーク」をちょっと思わせる、
小品だが心に残る良い作品だった。
 

冒頭の言葉は、
永遠の私のテーマでもあるが、

この映画は「独り」で生きる、
と言う事を思わせる。
 
ひとは一人では生きていけない。

確かにそうだ。
 
 
この世に生を受けた限り、
決して一人では生きていけない。
 
必ず誰かと関わり、生きていく。
 
しかし、独りで生まれ
独りで死んでいくものでもあるのが人生だ。
 
 
サチエは「独り」で立っていられる女性だ。
 
凛としていて、優しくて、
潔く、一本筋が通っている。
 
人は人、自分は自分、
と言う事が良くわかっているのだ。
 
 
だから誰かの人生に
安易に踏み込んだりしない。
 
みどりが突然涙ぐんでも、
「どうしたの?」とは聞かないし、

どうしてもここに来なければいけない
理由があったと聞いても、
「どんな理由で?」とは聞かない。
 
「本人しかわからない事ですし、
どちらにせよ、
私たちはまさこさんが決めた事を、
喜んであげないといけませんよね。」
 
もう一人の友人、
まさこが日本に帰ると聞いて悲しむみどりに、
サチエが言った言葉だ。
 

自分と同じように、
他の人の人生も大切なのだとわかっているから、

淋しいけれど簡単に悲しんだり、
引き止めたりしないサチエ。
 
 
何かに依存したり、誰かに期待したりしない、
そんな生きかたを、私はやはり美しいと思う。
 
 
 
食堂のメインメニューのおにぎりや、
シナモンロール、コーヒー、
から揚げやとんかつ。
 
出てくる料理はどれもシンプルだけれど、
みんな美味しそう。
 
北欧の港街ののんびりとした景色に、
おにぎりは意外なほど良く似合う。
 
女性3人の洋服も北欧の生地でまとめられ、
家具や食堂のキッチンツール、
食器類も北欧テイストがぎっしり。
 
インテリアやお料理の観点から言っても、
見ごたえのある作品になっている。