人生の《処方箋的》映画考

この「ままならない人生」を歩むとき、一つの映画がそっと、背中を押してくれる時もあれば、優しく寄り添ってくれるときもあります。 心を癒し、また、鼓舞してくれる映画を中心に、感想を綴っています。

「フライ・ダディ」

~心と体についた余計なものをそぎ落とせ!~ 

 

  作品情報 

 

   原題    Fly, Daddy, Fly

   監督    チェ・ジョンテ

  原作     金城 一紀 「フライ、ダディ、フライ」(角川文庫)
   脚本    チェ・ジョンテ
   出演者   イ・ジュンギ
          イ・ムンシク
          ナム・ヒョンジュン
          キム・ジフン
   公開     2007年4月21日
   上映時間  117分
   製作国   韓国

 

  あらすじ 

 

岡田准一堤真一の主演で映画化された金城一紀の『フライ,ダディ,フライ』を韓国でリメイクした青春ドラマ。ボクシングの高校生チャンピオンに暴行を受けた娘の復讐を誓う冴えない中年サラリーマンと、その助太刀を買って出る高校生との友情をさわやかに綴る。ごく平凡なサラリーマン、チャン・ガピルは、愛娘を暴行した高校のボクシング・チャンピオン、テウクに復讐するため学校に乗り込むが、クールな高校生スンソクに一発で倒されてしまう。そこでガピルは、本当に強くなって復讐を遂げるため、スンソクに弟子入りし、過酷な猛特訓を開始する。     
 
  感想   

「基礎とは何だ。
 不必要なものを捨て、必要なものを残すことだ。
 
 今、チャンガの頭と体は不必要なものでいっぱいだ。」

 
昔から、筋トレシーンが好きだ。

パピヨン」では、
スティーブ・マックイーン
暗い地下牢で、
飢えと戦いながら筋トレしていたし、
 
ターミネーター2」では、
凄い腕の筋肉をしたリンダ・ハミルトン
病室で懸垂していた。
 
ミーハーなところでは、
「恋にあこがれて in N.Y.」の 
フレディ・プリンゼ・Jrが、
上半身裸で筋トレして、
美しい筋肉美を披露していた。

自分が元来怠けもので、
辛いことはしたくないタチだからなのか、
とにかく、憧れてしまうのである。
 
ストイックな世界に。
 
主人公の平凡なサラリーマンを演じたイ・ムンシクは、
撮影前に15キロ体重を増やし、
撮影中にそれを落としたそうだ。
 
このイ・ムンシクという役者さん、
私は始めて見たのだけれど、
これがなんか、すごく良いのだ。
 
本当に、その辺にいるような、
会社で頑張って働いて、
家に帰ってビール飲むのが唯一の幸せって感じの、
冴えない平凡なサラリーマンそのもので、

ポッコリと出たお腹と、
人懐っこそうな笑顔が、
なんとも言えず、可愛い!!
 
劇中、黄色い全身タイツ?
みたいな、スポーツ用のウェアで
体を鍛える場面があるのだけれど、
クスクスと笑いが止まらない。

もうね、最高!
 

そんな彼が、
娘の為に変わろうと決意する。
 
走り、腹筋を鍛え、鉄棒にぶら下がり、
丘を登り、バスと競争する。
 
その息も絶え絶えの鍛錬は、
観ている方も息苦しくなるほどに
辛そうだ。

「新しい筋肉のために、古い筋肉を壊せ」

教える高校生スンソク役の
イ・ジュンギが涼しい顔で言う。
 
次第に、お腹がへこみ、筋肉がつき、
軽々と腹筋をこなし、
片手で腕立て伏せが出来るようになる。

走る姿の軽やかな事と言ったら!
 
その変貌ぶりは、本当に凄い、の一言。

人懐っこい笑顔は変わらないが、
体型はまるで別人のようだ。
 
作品の為に減量や増量をする役者さんは多いが、

この作品は、観ている私たちに、
「自分も頑張ってみようかな。やればできそうだ。」と、
勇気と希望を与えてくれる。
 
そして、逃げずに家族ときちんと向き合うこと。
自分ときちんと向き合うこと。
 
そんなことを教えてくれる作品でもある。
 
時にそれは、辛く厳しいことかもしれない。
 
けれども、
弱くみじめな自分をさらけ出し、

勇気を振り絞って立ち向かわなければ、
希望の光を見ることは出来ないのだ。
 
妻の愛、
師匠である、高校生スンシンとの絆、
スンシンを取り巻く友人たちとの友情。

たくさんの人に支えられ、
冴えないおじさんは最高のヒーローとなる。